會田瑞樹の音楽歳時記

打楽器奏者、會田瑞樹の綴る「現代の」音楽のあれこれ。

諸石幸生先生を偲んで

 昨夜、諸石幸生先生の訃報に接し、無性にベートーヴェンが聴きたくなった。交響曲第7番、第8番、第6番を立て続けに聞いた。諸石先生との思い出には、ベートーヴェンがぴったりと当てはまるような気がしたのだった。
 
 自分にとって10代の頃にあまり良い思い出はない。混迷し、苦悩し、ひたすら行き止まりの壁に頭をぶつけ続けているような状態だった。そんな時に諸石幸生先生と出会った。先生の中音域ほどの独特なハスキーボイスは授業中に眠りを誘うこともあったが、それでも先生は怒ったりしなかった。しかし、非常に肝心なところで厳しい叱責が一年に2,3回ほどあったようにも思う。だから教室は凛とした緊張感に包まれていた。
 
 諸石先生の授業に楽譜は出てこない。その代わりに多くの麗しい言葉と、みずみずしく音楽を「聞く」感性がそこにはあった。たくさんの人が受け継いできたクラシック音楽の魅力を言葉で表現していく。それは演奏家にとっても、楽曲をどうやってお客様に伝えるか、言葉は大切な手段の一つであることを諸石先生は教えてくださった。
 諸石先生は僕が取り組んでいくことになる現代の音楽に対しても深い眼差しで見つめてくださった。新しいものを忌避する音楽評論家も多い中で、諸石先生は次代の作曲家や演奏家の登場についても注目していた。時に議論は白熱し、そのまま近所の蕎麦店で熱く語り合うことも度々あった。その中で諸石先生と交わしたやりとりが、今も僕の中で燃え続けている。

 そして先生との関わりは教室を飛び越え、実際の現場での僕の様々な演奏会、CDを通しての交流が続いた。時にはご自宅にもお邪魔する機会をいただいたことは忘れられない思い出である。

 諸石先生から最後にいただいたメールは、第59回レコードアカデミー賞受賞へのお祝いだった。結びの言葉をここに引用したい。それは、自分に自信を持てず、惨めだった10代からの僕を知っている先生からの、永遠に響く激励の言葉である。

       「頑張ってください。努力は、きっと実ります。」

 諸石幸生先生のご冥福をお祈りいたします。

                        2022年4月15日 會田瑞樹

回顧2021/會田瑞樹初演36作品/内自作10作品の世界初演によせて

本年も多くの方々にお世話になりましたことを心から感謝申し上げます。
改めて、自分一人の力ではなく、たくさんの方々の力や想いを胸に、こうして前向きに一歩ずつ歩んでおります。心から感謝の思いでいっぱいです。様々な場で出会ったお客様が、これからも健やかに過ごしてくださること、そしてまたどこかでお目にかかることを楽しみにしております。小生は日々、実直に精進していく覚悟です。どうかみなさま良いお年をお迎え下さい。

2021.12.31 會田瑞樹

 

會田瑞樹
あらしのよるに
ヨコハマートライフ・芸術創造特別支援事業/みんなのまちの図書館が劇場に変身!テアトル図書館へようこそ!委嘱作品
出演………………會田瑞樹(ヴィブラフォン/作曲)/伊原農、枝元萌、はざまみゆき(劇団ハイリンド)
原作:きむらゆういち/構成・演出……齊藤実雪(かなっくホール
演奏助手………櫻井音斗・中村賢太郎/美術………………玉田多紀(造形作家)
宣伝美術………イワタアスカ/記録………………柏木俊彦(文章)・太田功二(写真)・造影乃(動画)
横浜市 緑/戸塚/鶴見/港南/神奈川/中央/瀬谷/都築/金沢図書館において上演。

 

會田瑞樹
《踊れ、赤い靴》
佐藤晴睦氏へ献呈/佐藤晴睦ヴィブラフォンリサイタルにおいて初演

 

成田為三作曲/會田瑞樹編曲
《浜辺の歌 1943to2021》
清水友美、藤本辰也両氏に献呈/清水友美ピアノリサイタルにおいて初演

 

小内將人
《イグナシオ・サンチェス・メヒーアスへの哀悼歌(ガルシア・ロルカ/1935)より1,「負傷と死」》
スペイン大使館主催「ロルカ芸術大全」(小内將人プロデュース)
Bariton/松平敬・工藤あかね Cla./菊地秀夫 Vib./會田瑞樹 Vln./田中李々 Pno./瀬川裕美子

 

稲森安太己
タマリット詩集(ガルシア・ロルカ/1936)より2つのカシーダ「水に傷ついた子供のカシーダ」「不可能な手のカシーダ
スペイン大使館主催「ロルカ芸術大全」(小内將人プロデュース)
Sop./工藤あかね Vib./會田瑞樹 Vln./田中李々 Pno./中村和枝

 

山内雅弘
《差異について》
山内雅弘作曲個展において初演。Toy pf.大須賀かおり、vib.會田瑞樹

山内雅弘
《忘却のリトルネッロ》
山内雅弘作曲個展において初演。
指揮:馬場武蔵 / Fl.間部令子 / Cl.岩瀬龍太 / Vn.松岡麻衣子 / Vc.山澤慧 / Pf.大須賀かおり / Perc.會田瑞樹

 

篠原眞
《Septet <七重奏曲>フルート、クラリネットトロンボーン、ヴィブラフォーン、ピアノ、ヴィオラ、チェロのための》(2013:日本初演
篠原眞 室内楽作品による個展において日本初演
大西義明(cond)、梶原一紘(fl)菊地秀夫(cl)村田厚生(tb)會田瑞樹(vib)大須賀かおり(pf)甲斐史子(va)山澤慧(vc)

 

小内將人
《語りと学校の打楽器による芥川龍之介『魔術』》
語りと音楽の会 ともだちや 2021夏の公演 において初演。朗読.たにかずこ、Perc.會田瑞樹

 

會田瑞樹
《雨の降る前に... ーヴィブラフォン一台二重奏のためのー》
アンサンブルさいさい委嘱作品/「アンサンブルさいさい打楽器アンサンブルコンサート vol.2」
vibraphone生誕(製造)100周年記念 會田 瑞樹氏を迎えてにおいて初演。
Vib.谷口かんな、會田瑞樹

A.ヴィヴァルディ/J.S.バッハ/會田瑞樹
《打楽器のための協奏曲 ーヴィヴァルディの調和の霊感、バッハのオルガンの残照にー》
アンサンブルさいさい委嘱作品/「アンサンブルさいさい打楽器アンサンブルコンサート vol.2」
vibraphone生誕(製造)100周年記念 會田 瑞樹氏を迎えてにおいて初演。
Perc.池田健太、立入瑞希、谷口かんな、前田紗希、松井駿、山本美緒、横田悠哉、會田瑞樹

 

會田瑞樹
《Ultramarine-Beyond the Sea》
リトアニア聖クリストファー国際作曲コンクール LMIC特別賞受賞作品
指揮:Modestas Barkauskas/Šv. Kristoforo kamerinis orkestras

 

會田瑞樹
《星への航海のための前奏曲
藤本辰也氏委嘱作品/藤本辰也、清水友美両氏に献呈。
清水友美ピアノリサイタル 山田耕筰のピアノ音楽の世界 Vol.4において初演。
Piano.清水友美

 

今堀拓也
《Bruckneriana for vibraphone solo》第一楽章
會田瑞樹委嘱/會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル2021 〜夢幻泡影〜において初演。

辻田絢菜
《CollectionismⅩⅤ/Undine》
會田瑞樹委嘱/會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル2021 〜夢幻泡影〜において初演。

鈴木純
《1Q22 pour vibraphone solo》
會田瑞樹委嘱/會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル2021 〜夢幻泡影〜において初演。

J.S.Bach(會田瑞樹編曲)
《パルティータ第二番BWV826よりロンド/カプリス》
會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル2021 〜夢幻泡影〜において初演。ヴィブラフォン:會田瑞樹、マリンバ:谷口かんな、横地ちひろ

 

會田瑞樹
マリンバ・ファナティコ》
第30回TIAA全日本作曲家コンクール入賞者披露演奏会に置いて初演。審査員賞受賞。
マリンバ:會田瑞樹

 

佐原詩音
《鳥瞰する秘境》
Asia~音楽の脈動~ 第一夜において初演。
Vn.鈴木舞/箏.山水美樹/Hr.近藤圭/馬頭琴.末留かおり/Vc.笹沼樹/Cb.近藤聖也/Cond.會田瑞樹

會田瑞樹
《The river 2021》
Asia~音楽の脈動~ 第一夜において初演。
能.清水寛二/Sop.山下裕賀/Sitar.ヨシダダイキチ/馬頭琴.末留かおり/箏.山水美樹/Handdr.濱元智行/Gr.谷口かんな
Pakhawaj.カネコテツヤ/Perc.小林孝彦、會田瑞樹

たかの舞俐
《In A Different Way》
Asia~音楽の脈動~ 第一夜において初演。
Sitar.ヨシダダイキチ/Pakhawaji.カネコテツヤ/Fl.丁仁愛/Sax.松下洋/Vn.鈴木舞/Vc.笹沼樹/Perc.會田瑞樹/Cond.たかの舞俐

梅本佑利
《(i)sekai》
Asia~音楽の脈動~ 第二夜において初演。
能.清水寛二/演奏.丁仁愛,福島広之,松下洋,鈴木舞,近藤聖也,會田瑞樹

 

佐原詩音
《私は明日、インドへ行く 〜独り舞台と創作音楽のための〜》
~佐原詩音 作曲個展 vol.4~において初演。
主演:川田希/Sitar.ヨシダダイキチ/Vib&perc.會田瑞樹

 

Yun-Chih-Huang
《答答答答答 For Solo Vibraphone》
First selections “Call for Score Project” /會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル 2021〜近江楽堂の思い出に〜において初演。
Vib.會田瑞樹

Ronald Macniven
《Milton Inventions for solo vibraphone》
First selections “Call for Score Project” /會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル 2021〜近江楽堂の思い出に〜において初演。
Vib.會田瑞樹

José Jesus de Azevedo Souza
《Mind the Music》
First selections “Call for Score Project” /會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル 2021〜近江楽堂の思い出に〜において初演。
Vib.會田瑞樹

Andrew Middleton
《Three Folk Songs》
First selections “Call for Score Project” /會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル 2021〜近江楽堂の思い出に〜において初演。
Vib.會田瑞樹

Ssu-Yu Huang
《Blooming Flowers for Vibraphone Solo》
First selections “Call for Score Project” /會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル 2021〜近江楽堂の思い出に〜において初演。
Vib.會田瑞樹

Nickos Harizanos
《Here comes the swallow》《Corfu Fance》
First selections “Call for Score Project” /會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル 2021〜近江楽堂の思い出に〜において初演。
Vib.會田瑞樹

Daiwei Lu
《THE SUN RITUAL》
First selections “Call for Score Project” /會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル 2021〜近江楽堂の思い出に〜において初演。
Vib.會田瑞樹

Andrew.M.Wilson
《BLUE BOY》
First selections “Call for Score Project” /會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル 2021〜近江楽堂の思い出に〜において初演。
Vib.會田瑞樹

薮田翔一
《反射区 ~ 其のニ ~》
會田瑞樹委嘱/會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル 2021〜近江楽堂の思い出に〜において初演。
Vib.會田瑞樹

三関健斗
《Swing-by “ex/partition”Ⅴ for Vibraphone solo》
會田瑞樹委嘱/會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル 2021〜近江楽堂の思い出に〜において初演。
Vib.會田瑞樹

佐原詩音
《風の祝〜琉球アイヌの歌〜》
會田瑞樹委嘱/會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル 2021〜近江楽堂の思い出に〜において初演。
Vib.會田瑞樹

水野修孝
ヴィブラフォン2021詩音》
會田瑞樹委嘱/會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル 2021〜近江楽堂の思い出に〜において初演。
Vib.會田瑞樹

大部胡知
《シアトリカル・ラプソディ『冬物語』》
會田瑞樹委嘱/會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル 2021〜近江楽堂の思い出に〜において初演。
Vib.會田瑞樹

回顧2020/會田瑞樹世界初演60作品、デビュー通算300作品突破によせて

2020年も残すところあと僅かとなりました。

 毎年、世界初演リストを編集してみると、自分自身のその一年の動向が手に取るように感じられ、様々な思いが去来するのですが、今年は様々な思いが胸に込み上げてきます。

 2010年、競楽Ⅸでのデビュー以来、打楽器音楽の新たな可能性を探るべく世界初演の活動を重ね、2020年は60作品、通算300作品超の新作初演を手がけてきました。これはひとえに、多くの作曲家の方々が打楽器、ヴィブラフォンに温かな眼差しを向けてくださった賜物であり、心から感謝の思いでいっぱいです。

 様々な困難に直面した2020年でも、新たな協奏曲が誕生し、會田瑞樹自身もリトアニアに魂とそのサウンドを発信し、新たな音楽創造を紡いだ試みもありました。すべては、多くの方々のお力があっての一歩だと思っています。

 ニューアルバム「いつか聞いたうた」も、全ての仲間たちと全員野球で紡いだアルバムです。改めて多くの方々に手にとっていただけたら幸いと存じます。

 それでは今年の60曲の仲間たちをご紹介いたします!!

三関健斗
《存在の定着》
三関健斗作品個展において初演

平山智
《The Moon from Tokyo to New York》
TOKYO TO NEW YORK/東京とニューヨーク​(トーマス・ピアシー;クラリネット 會田瑞樹;ヴィブラフォン)において初演

薮田翔一
《Lullaby》
TOKYO TO NEW YORK/東京とニューヨーク​(トーマス・ピアシー;クラリネット 會田瑞樹;ヴィブラフォン)において初演

白藤淳一
《Collage Ballade》
TOKYO TO NEW YORK/東京とニューヨーク​(トーマス・ピアシー;クラリネット 會田瑞樹;ヴィブラフォン)において初演

會田瑞樹
《Yo-Vivo-En go to New York》
TOKYO TO NEW YORK/東京とニューヨーク​(トーマス・ピアシー;クラリネット 會田瑞樹;ヴィブラフォン)において初演

清水一徹
《TomA》
TOKYO TO NEW YORK/東京とニューヨーク​(トーマス・ピアシー;篳篥 會田瑞樹;打楽器)において初演

Jean Patrick BESINGRAND
《Yomotsu-hisame 泉津日狭女》
TOKYO TO NEW YORK/東京とニューヨーク​(トーマス・ピアシー;クラリネット 會田瑞樹;ヴィブラフォン)において初演

佐原詩音
《Twinkle Twinkle Supernova》
TOKYO TO NEW YORK/東京とニューヨーク​(トーマス・ピアシー;クラリネット 會田瑞樹;ヴィブラフォン)において初演

J.S.バッハ/白藤淳一編曲
《プレリュード BWV539》
DrumShopACT主催"ヴィブラフォンのめっちゃあるところ"(ヴィブラフォン:谷口かんな、會田瑞樹)において初演

佐原詩音
《坂道の彼方へ》
DrumShopACT主催"ヴィブラフォンのめっちゃあるところ"(ヴィブラフォン:谷口かんな、會田瑞樹)において初演

佐原詩音
《White Plane in the Sky》
DrumShopACT主催"ヴィブラフォンのめっちゃあるところ"(ヴィブラフォン:谷口かんな、會田瑞樹)において初演

會田瑞樹
《Game[L/R]andomPulse》
DrumShopACT主催"ヴィブラフォンのめっちゃあるところ"(ヴィブラフォン:谷口かんな、會田瑞樹)において初演

野田雅巳
《ヴァイブラさん 〜1台のヴィブラフォンと2人の演者のためのちいさな劇》
會田瑞樹委嘱/會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタルinOSAKA(フェニックス・エヴォリューション・シリーズ91)において初演

野村誠
《相撲ノオト》
會田瑞樹委嘱/會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタルinOSAKA(フェニックス・エヴォリューション・シリーズ91)において初演

坂田直樹
《Leptothrix》
會田瑞樹委嘱/會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタルinOSAKA(フェニックス・エヴォリューション・シリーズ91)において初演

中村典子
《艸禱 popoli》
會田瑞樹委嘱/會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタルinOSAKA(フェニックス・エヴォリューション・シリーズ91)において初演

近藤浩平
《いつか夢になるまで~家の中にとどまる音楽家達のために~(抜粋版)》
WEB初演

梅本佑利
《cuddly version for Vibraphone》
WEB初演

會田瑞樹
ヴィブラフォンのあるところ ~Ken〜 土門拳へのオマージュ》
山形県酒田市土門拳記念館×會田瑞樹「オンラインミュージアムコンサート」において初演。
作曲、全演奏/會田瑞樹

會田瑞樹
《語りとピアノのための音楽 ー親指太郎とダチョウー》
ピアノ:青柳いづみこ 語り:會田瑞樹

和田なごみ
《La.La.La》
創作!現代音楽で遊ぼう! 佐原詩音・會田瑞樹・山口徳花 トリプルコンサートにおいて初演。
チェロ:山口徳花 ピアノ:和田なごみ マリンバ:會田瑞樹

佐原詩音
倭国の大祭》
創作!現代音楽で遊ぼう! 佐原詩音・會田瑞樹・山口徳花 トリプルコンサートにおいて初演。
チェロ:山口徳花 ピアノ:佐原詩音 ヴィブラフォン:會田瑞樹

會田瑞樹
《Sutartinés for Strings Orchestra and Vibraphone》
2020年10月8日リトアニア:ヴィリニュス;聖クリストファー室内合奏団特別演奏会「杉原千畝の道」において初演。
Dedicated to Maestro Modestas Barukauskas and St.Christopher chamber orchestra
指揮:モデスタス・バルカウスカス/聖クリストファー室内合奏団/ヴィブラフォン独奏:會田瑞樹

佐原詩音
《Chiune》
2020年10月8日リトアニア:ヴィリニュス;聖クリストファー室内合奏団特別演奏会「杉原千畝の道」において初演。
指揮:モデスタス・バルカウスカス/聖クリストファー室内合奏団/ヴィブラフォン独奏:會田瑞樹

近藤浩平
ヴィブラフォン吹奏楽の為の協奏曲 "ホトトギスの夜"》
現代奏造Tokyo×日本作曲家協議会 吹奏楽の夕べ
指揮:板倉康明/現代奏造Tokyo/ヴィブラフォン独奏:會田瑞樹

和田なごみ
《波》
湘南クラシック音楽を愛する会主催:會田瑞樹ヴィブラフォンコンサートin茅ヶ崎において初演/ヴィブラフォン独奏:會田瑞樹

梅本佑利
《电子小吃!》
湘南クラシック音楽を愛する会主催:會田瑞樹ヴィブラフォンコンサートin茅ヶ崎において初演/ヴィブラフォン独奏:會田瑞樹

羽根玲夢
《うたかたの雲》
湘南クラシック音楽を愛する会主催:會田瑞樹ヴィブラフォンコンサートin茅ヶ崎において初演/ヴィブラフォン独奏:會田瑞樹

ドビュッシー/會田瑞樹編曲
《沈める寺》
SUPER DOMMUNE 2020/10/27|Three Shells Presents「打楽器百花繚乱 會田瑞樹の世界」において初演/ヴィブラフォン独奏:會田瑞樹

細川俊夫/日本古謡
《Sakura》
森ミドリ/橋本國彦
《お菓子と娘》
水野修孝/滝廉太郎
《花》
山本菜摘/滝廉太郎
《荒城の月》
佐原詩音/山田耕筰
《この道》
今堀拓也
《ほたるこい》
佐原詩音
《われは海の子》
吉原一憲
《てぃんさぐぬ花》
白藤淳一
《どどさい節》
国枝春恵
《はないちもんめーひらいたひらいたーあんたがたどこさ》
大畑眞
《長谷観世音火伏の虎舞》
會田瑞樹/成田為三
《浜辺の歌1943》
山本純ノ介改編
《残芯の汽車ぽっぽ》
木下正道
《無名の歌》
薮田翔一/山田耕筰
《赤とんぼ》
會田瑞樹/岡野貞一
《紅葉》
福嶋頼秀/草川信
《揺籠の歌〜夕焼け小焼け》
徳永洋明
《五木の子守唄》
清道洋一/山田耕筰
《ペチカ》
権代敦彦/岡野貞一
《ふるさと》
2020年11月2日 會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル2020ーいつか聞いたうたーにおいて初演
アルバム「いつか聞いたうた ーヴィブラフォンで奏でる日本の叙情ー」に収録

會田瑞樹
《Welly for Gender and Vibraphone》
2020年11月28/30日(仙台/東京)東京オペラシティ文化財団B→C會田瑞樹パーカッションリサイタルにおいて初演
ヴィブラフォン:會田瑞樹、グンデル:谷口かんな

薮田翔一
《闇の色》
會田瑞樹委嘱/2020年11月28/30日(仙台/東京)東京オペラシティ文化財団B→C會田瑞樹パーカッションリサイタルにおいて初演
ヴィブラフォン:會田瑞樹、グンデル:谷口かんな、十三弦箏:金子展寛

細川俊夫
《夕顔》
會田瑞樹委嘱/2020年11月28/30日(仙台/東京)東京オペラシティ文化財団B→C會田瑞樹パーカッションリサイタルにおいて初演
ヴィブラフォン独奏:會田瑞樹

J.S.Bach/白藤淳一編曲
《プレリュードとフーガ BWV543》
會田瑞樹委嘱/2020年11月28/30日(仙台/東京)東京オペラシティ文化財団B→C會田瑞樹パーカッションリサイタルにおいて初演
ヴィブラフォン:會田瑞樹、二十五弦箏:金子展寛

江藤光紀
《さまざまな風》
第9回つくばリサイタルシリーズにおいて初演
ヴァイオリン:福田廉之介、ピアノ:高橋優介、マリンバヴィブラフォン:會田瑞樹

中村匡寿
《Metal Metaball》
7人の作曲家展 vol.4 “オトリウム”において初演
トロンボーン:飯田智彦、ヴィブラフォン:會田瑞樹

佐原詩音
《音楽絵本 ヨビボエン、インドネシアに行く》
佐原詩音作曲個展vol.3 おはなしとおんがくにおいて初演
語り:佐原詩音、ピアノ:正住真智子、箏:山水美樹、グンデル:會田瑞樹

佐原詩音
《モノオペラ シュレーディンガーの猫たち》
佐原詩音作曲個展vol.3 おはなしとおんがくにおいて初演
指揮:佐原詩音、ソプラノ:工藤あかね、ピアノ:正住真智子、箏:山水美樹、コントラバス佐藤洋嗣、打楽器:會田瑞樹

久保哲朗
《Falls in silence》
9人のアンデパンダン展 Christmasに響く現代の音楽において初演
ヴィブラフォン:會田瑞樹

佐原詩音
《黒いサンタクロース~Knecht Ruprecht~》
9人のアンデパンダン展 Christmasに響く現代の音楽において初演
指揮:近藤圭、語り:佐原詩音、バスクラリネット:福島広之、ピアノ:正住真智子、箏:山水美樹、打楽器:會田瑞樹

會田瑞樹
《糾縄 〜バンドネオンヴィブラフォンのために〜》
聖地会議EXPO2020/月と流星群プロデュース・ヴィブラフォンで辿る聖地巡礼において初演
バンドネオン:仁詩、ヴィブラフォン:會田瑞樹

みなさま、良いお年を!来年もお目にかかることを楽しみにしております!!

 

會田瑞樹

 

 

Mizuki AITA《Chant/Sutartinés》Program Note

About the Piece/Mizuki AITA

"Chant/Sutartinés" was composed with the special performance "THE PATH OF CH. SUGIHARA" of St. Christopher Chamber Ensemble held in Vilnius, Lithuania on October 8, 2020. In December 2019, the music director of the orchestra, Modestas Barkausukas, received an offer to come to Lithuania again as a guest for the concert with the theme of Chiune Sugihara. It was an unexpected joy. I begged not only to play right away, but also to devote one song to myself. In honor of Chiune Sugihara's 120th birthday, I wanted to write a song in the hope that I would like to convey the will to the next generation and further friendship between Lithuania and Japan.  
The work consists of three parts.  
“Chant I” is a double copy of the medieval melody 《Dievo Motina Mergele》 transmitted to Lithuania and 《Dirahon》 sung as a witchcraft revived in Aogashima, Tokyo. It is intended to exude the melody of the Virgin Mary and the aya of two songs with a mourning spirit.  
In “Chant II”, the vibraphone player calls out the name of each orchestra and plays each phrase in response to it. Eventually, the swell reverberates into a big wave. The act of calling for a name is intended to remind us of the act that Sugihara Chiune himself issued visas to many people.  
”Chant III” is based on the Lithuanian traditional singing style “Sutartinés”, resulting in a festive grand circle while quoting Japanese Bon Odori verses.  
After composing, I would like to thank Koichiro Oguni for his wonderful pure books.  Throughout this work, I continued to pray for the friendship between Lithuania and Japan, and the countries of the world, accepting and understanding the diverse values of each other, holding hands together, and strengthening permanent peace. It is a desire.
I would like to dedicate this work to the conductor and orchestra music director Modestas Barukausukas and Saint Christopher Chamber Ensemble.
Again I believe that we can meet again.

 

 作品について/會田瑞樹
 《Chant/Sutartinés》は2020年10月8日にリトアニア・ヴィリニュスにおいて開催される聖クリストファー室内合奏団特別公演「THE PATH OF CH. SUGIHARA」での上演を念頭において作曲した。2019年12月に楽団音楽監督である指揮者Modestas Barkausukasより、杉原千畝をテーマとした演奏会にゲストとして再びリトアニアに来て欲しいという申し出を受けた。それは望外の喜びであった。私はすぐさま演奏だけでなく、自らも一曲を献呈したいと懇願した。生誕120年となる杉原千畝の功績を讃え、次世代にその意志を伝えること、そしてリトアニアと日本両国のさらなる友情を願って作曲をしたいと思った。  
 作品は三つの部からなる。
 “Chant Ⅰ”はリトアニアに伝わる中世の旋律《Dievo Motina Mergele》と東京都青ヶ島に伝わる死者を蘇らせる呪術として歌われた《でぃらほん》が二重写しとなる。聖母マリアを思う旋律と、弔いの精神を持つ二つの楽曲の持つ綾が滲み出ることを意図している。  
 “Chant Ⅱ”はヴィブラフォン奏者が映像上では楽団員一人一人の名前を書き、査証の際に必ず聞く音を思わせる大きな印判を押す。それに呼応する形で奏者はそれぞれの楽句を奏でていく。やがてそのうねりは大きな波となり響き渡る。名前を書くという行為は杉原千畝自身が多くの人々にビザを発給し続けたその行為を追憶する意図を持つ。  
 “Chant Ⅲ”はリトアニアの伝統的な歌唱形式”Startinés”を基に、日本の盆踊りの楽句を引用しながら祝祭的な大団円へと帰結する。  
 この作品を通して終始願い続けたのは、リトアニアと日本の両国の友好、そして世界のそれぞれの国が、相互の多様な価値観を受け入れ、理解し、共に手を取り合って、恒久的な平和を強く希求する思いである。  
作曲ののち、小國晃一郎さんによる素晴らしい浄書のお力を心からの感謝を申し上げたい。
 この作品を指揮者であり楽団音楽監督であるModestas Barukausukasと聖クリストファー室内合奏団に献呈したい。再び私たちは巡り会うことができると私は信じてやまない。

 

10月9日深夜1時より開演。

youtu.be

 

西耕一さんのこと

 2010年12月、競楽Ⅸ本選会。プログラム最後に演奏を終えて、真っ先に声をかけて来た方が西耕一さんだった。その後いただいたはじめてメールにはこんなことが書いてあった。
「…現代作品を演奏する打楽器奏者は多いですが、會田さんは一味違った選曲をしてくれそうで、期待しております。(中略) 會田さんの、まるで松村先生が憑依したような演奏は完全に会場を虜にしていました。(後略)」  

               「憑依型」

 西さんは開口一番僕にそう言ったのだった。そしてその場にいた聞きに来ていた友人と僕の母はどっと、笑い出した。母に言わせると、西さんのあの一言でなんだか彼をいっぺんに信じ切ってしまった、と笑う。  

 当時西さんは音楽現代(現代芸術社刊)に音楽評論を寄稿し、都内の何らかの演奏会に行けばお目にかかることができた。何度か立ち話やメールをしているうちに、日本現代音楽の振興と埋もれた作品に再び光をあてることを強く希求されていて、そのビジョンは僕と一致していた。吹奏楽による「奏楽堂の響き」シリーズプロデュースも手がけて、様々な日本の作品を蘇演、委嘱も幅広く、細身の身体でよくこれだけの大事業を成し遂げているものだと僕は感心しきりだった。そんな西さんに翌年サントリーホールで開催した僕の初めての企画公演、レインボウ21「打楽器音楽、その創造と継承」にもご来場いただき、後日じっくりと総評いただいた。また現在も熱くお付き合いが続くWINDS CAFE主宰の川村龍俊氏をご紹介くださり、年に一度のWINDS CAFE公演は互いの主戦場の一つとなっている。2012年開催の「八村義夫の世界」や第一回目となるヴィブラフォンリサイタルも企画段階から相談に乗ってくださった。当時会場にいらした楢崎洋子先生からのメールにはこんな一文が残っている。「西耕一さんは強力な協力者ではないですか。」

 
 2012年の八村企画を終えた頃に、「ラウダやるぞ。」と突然のメール。夢にまで見た伊福部昭作曲《ラウダ・コンチェルタータ》をピアノ伴奏版で復活させるという。今でこそ譜面の入手は容易いけれど、当時は出版社や日本近代音楽館へ問い合わせて散逸した資料をつなぎ合わせた。その一つ一つの作業が今となっては僕の糧だ。そうして稽古を積み、西さん企画による2013年伊福部昭生誕99年白寿コンサートを敢行。杉並公会堂から人が溢れるほどにお客様が詰めかけ熱狂の渦の中での演奏会だった。この白熱のライヴ公演のディスク(3SCD-0014)が僕の実質のデビューアルバムでもある。休む間も無く同年八月には松村禎三先生の業績を讃えるアプサラス第4回演奏会で松村先生の遺した子どものための作品を一堂に会した演奏会(3SCD-0020)、九月にはオーケストラ・トリプティーク第二回演奏会「日本の弦楽オーケストラ傑作集」(3SCD-0017)を手がけ、鹿野草平作曲《ヴィブラフォン、金属打楽器と絃楽のための協奏曲》で僕は人生初めてのソリストデビューを果たした。以上全ては西さんのプロデュースによるものだった。終演後西さんは「會田をソリストデビューさせることが目標だった。これで俺の役目は終わったのだ。」と上機嫌に、でも少し寂しそうに語ったのをよく覚えている。
 

 この公演を境に、僕と西さんはそれぞれの主戦場に赴くこととなった。当時の僕は留学を考えないわけでもなかった。ソリストデビューのあとは悩みに悩んだ一年を過ごした。それは六年間の学部と修士課程を終える刹那的な時間でもあった。一方の西さんは前述のオーケストラ・トリプティークのさらなる拡張を目指し、団長の伊藤美香さんと共に奔走していた。その姿は羨ましくもあり、同時に励みになった。これだけのことを成し遂げていくエネルギーは一体どこから来るのだろうと思った。そしてそれを、どんな形であれ見続けていたいという興味が尽きることはなかった。  
 僕は自然と日本での演奏活動を決意し、2014年4月からフリーランスとしての歩みをスタートさせたのだった。以降の小生の活動はプロフィール欄を参照してほしい。  

  時は経ち2020年春。世界が大きく揺れ動く中で西さんに連絡をした。「新しい、4枚目のアルバムは西さんとやりたいです。」西さんが「憑依型の演奏」と僕を評してから10年の月日が経とうとしていた時だった。

會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル2020 いつか聞いたうたのチケット情報(2020/11/2(月)) - イープラス

楢崎洋子先生を偲んで

 大学時代の4年間、顔から火が出そうな事を毎日積み重ねていた。見えているはずのものが見えていなかったり、小さいものが大きく見えていたり、大きいものを小さくみようと意固地になったりする生意気がカラダ中を支配していた。

 そんなわんぱく小僧が、楢崎洋子先生と出会った。

 2010年、八村義夫に出会った興奮そのままに、自分は日本の作曲家をやらねばならないという使命感に取り憑かれた小僧は4月に楢崎先生と出会う。先生の専門は日本現代音楽であり、僕にとっては格好の生き字引であった。先生の授業は文献に忠実に、出典を明確にすること、思い込みで書いたりしない。その三点を中心に展開された。一方僕はといえば、思い込みまっしぐらのイノシシだった。少し自分が発表をすれば、楢崎先生は苦笑いをして「ああ、もう時間足りないじゃないですか。」とまくしたてるように僕の誤りを正す。一時期、あの先生はいつ息継ぎをしてしゃべっているんだと学生の間で噂されるほど、先生はいつも急いでいた。
 そんな忙しい授業だから、僕は最前列に陣をとって漏らさず聞くように心がけた。日本現代音楽のアカデミズムと在野の分析からはじまる講義の数々は、自分自身が好きだったたくさんの現代作品が、手に取るように分類され、八村義夫という人の特異性にあらためて気がつくこととなった。同時に、まずは日本の現代打楽器音楽の総覧となるような演奏会をしてみたいと思うようになった。それがサントリーホールレインボウ21への応募につながり、先生にもその企画骨子を作る上でいくつもの励ましのお言葉をいただきながら、選曲と企画書の内容を詰めていった。手作りの企画書は公演実現に向けて、その歩みをサントリーホールへと進めて行った。  
 2011年4月からの楢崎先生の授業の冒頭はレインボウ21のプログラムノートの入稿期限その日まで僕の文章の推敲にあてられた。夜中の三時を過ぎてなお、楢崎先生から電光石火の如く猛烈な赤字のワードファイルが帰ってくる。この人、一体いつ寝てるんだよ、と画面の前で声をあげたものだった。  
 当時のデータが残存していた。 (太字斜体は楢崎先生の赤入れ修正、細字は拙文)

曲目解説 記憶の籠を辿る時⇒わかりにくいです
 
古くから歴史を持つ楽器は、時代を経るごとに改良を重ね、最良の響きがなされるために研ぎ澄まされていった。同時に、優れた作曲家とその声に耳を澄ます演奏家の存在があった。そしていま、現代に生きる私たちはその楽器を手に取っている。(⇒ヴァイオリンをはじめ、改良されない楽器もあり、また、打楽器でもマリンバなどは改良されるので、このセンテンスは適切ではありません。たとえば、以下のような書き出しにする)  
 打楽器の音楽は、ここ50年の日本の現代音楽界において多くの発展を遂げた。そこには希代の名演奏家と、作曲家の存在があった。とりわけ打楽器奏者吉原すみれの登場によって、作曲家はその存在そのものに大きな(⇒トルツメ)創作意欲を燃やした。吉原のために多数の作品が書かれ、ひたむきに一音一音に向き合うその姿に、作曲家たちは惚れ込んだ。かつて作曲家石井眞木はこう言った。「打楽器のカンバスにはまだ白地が残っている。打楽器音楽には、まだまだこれから新しい創造の花を描く広い余地がある」。  
 今、日本の打楽器音楽の歴史は半世紀を迎えた。ここでひとつの歴史の総覧し、若い世代は、その大いなる遺産を継承するときが来ている事を認識しなければならない。 ここに、今回の選曲はどのようなコンセプトによるのか、4つのグルーピングはどのような観点によるのか、それぞれのグループの聴きどころ等を述べてください。ソロ(マルチ・パーカッション)、ソロ(マリンバ、鍵盤)、打楽器アンサンブル、の3つのタイプに分けられていると思うので(ソロ(マルチ・パーカッション)はさらに2タイプに分けられていることになるでしょうか)、それらの楽器の選び、組み合わせの違いによる打楽器の様々な局面についても述べてください。 同時にこの演奏会で、打楽器音楽の深い魅力を、多くの聴衆の皆様方が発見して下さる事を願ってやまない。

※各曲の解説の中で初出の作曲家名には(  )で生年~没年を書いてください。もし、前文で作曲家名を挙げるのであれば、前文の中で挙げてください。 ※以下の曲目解説では、どの作品についても作曲者の自作解説を簡潔に紹介して解題してください(引用に語らせないこと)。


Ⅰ 打楽器音楽の創始
 以下の武満、福士の作品を「打楽器音楽の創始」に分類するのはあまり適切ではないと思うのですが(すでにチラシに書いてますね)、創始として扱うなら、その根拠を述べてください。たとえば、すでにあった欧米の打楽器音楽とは異なる新たな特徴を加えたという点で、これらの作品を日本の打楽器音楽の創始と呼ぶにふさわしいのかを、いかなる点で新しいのか、独特なのかを、各曲の解説の中で述べてください。たとえば、ソロによるマルチ・パーカッション作品である点を取り上げて、楽器の選びにどういう傾向や特徴があるのか、等について書いてください。北爪さんの曲を最後に「未来へ向かって」に取りあげるなら、ソロ・パーカッション作品における楽器の選びや発想が、この数十年のあいだにどう変遷してきたかについて(たとえば、多種類を使おうとすることから、そうではない方向に変わってきたのかどうか、それはなぜなのか)、各曲の解説の中で、前文にも書いてください。(以下後略)

 感情に流されやすい僕の性格をも見抜いているかのような赤入れは、当時の僕に多大な影響を及ぼしたことは言うまでもない。太陽が登る頃に修正原稿を先生に再送。床で寝たのち、始業10分前に起床し大学に走る。これも僕にとって演奏と同じくらいに大事なレッスンであり、思考の稽古だった。  

 学部二年間の楢崎先生との邂逅は僕の礎を築く重要なものだった。大学院に進学したのちは個人的な授業の繋がりは減っていったものの、様々に挑戦する賞の審査員として楢崎先生は度々公演会場に足を運んでくださっていた。大抵先生は終演後、どうしてこんなに早く歩けるんだ、という超速の歩みで会場を後にされ、立ち話すら困難だった。先生は急いでどこへ向かっていたのだろう。  
 2020年8月28日、楢崎洋子先生の訃報に接し、メールサーバーに一番に出て来たのが2013年8月のリサイタルを終えた後のやりとりだった。それは、今尚僕に語りかけるメッセージだと思った。時を超えそれは、楢崎洋子、という生き様すら、そこに見出してしまう自分がいた。そんなことを先生に申し上げたなら、たちまちきっと、少し早口に、「あなたはいつもそういう感傷的なところがあるから。」と笑顔を見せてくださるかもしれないと、思いを馳せる。

 

 會田瑞樹 様  
 昨日は舞台、客席ともに充実していておめでとうございます。忙しくなるなかで質を変えることなくこなしておられることにまず敬服します。昨年を思い起こしてみると、会を重ねるごとにじんわりと演奏の視界と語彙が豊かになっているのを感じます。それを続けることで、要のタイミングには飛躍的に変わったなあと感じさせることがあるのでしょう。今回の演奏も、作曲者にとっても、それぞれの構想にほとんど重なるような理解にあふれた演奏だったであろう、と思われます。  
 今後、聴きたいと思うのは、作品に対しても、それを音にする自分自身の演奏に対しても、批判的な視点を向けた演奏でしょうか。舞台に提示するのは、それまでの過程をいっさい封じるような、すっきりした作品像であり演奏で ある、といった認識を會田さんの演奏には感じるので、舞台には出てこない、各作品に対してのいろいろな引っかかりはないことはないだろうとも思います。作品に対しての、それを演奏する自身の理解に対しての引っかかりを批判として、作品と演奏に対峙させた演奏を聴きたいとも思います。  
 批判は、否定することでもなく悪口を言うことでもなく、対象に潜むものを引き出すための考察であり、それを引き出すために自身の演奏を超えるための考察です。作品と演奏の関係は、円環をなすものであるよりも、相互に理解を超えるところがおもしろいのだと思います。理解を超える関係を克服したのが今回の演奏であるのかもしれません。演奏する作品のタイプが広がるほどに、作品と演奏が鼓舞し合う演奏を聴きたいと思います。  楢崎洋子  

 

 楢崎洋子先生のご冥福をお祈りいたします。

 2020年8月30日 會田瑞樹

食べることが三度の飯より好き:五食め「麻婆豆腐」

 この料理は奥が深い。   
 いつも色々な場所に着地してしまう。毎回、同じところに着地できないのだ。  
 豆腐の水切りの問題もあるのかもしれない。いや、隠し味のトマトの水気の量が本当に素材によって違う。もしくはどこまで辛くするか… とにかく毎回、作るたびに発見があるし、レシピも様々。家庭によっても、レストラン、街の中華屋さん...どこにいっても絶妙に異なった、個性的な味付けがある。
 

 肉味噌を作る。弱火でじっくりひき肉の余分な油を取り出してかりっとした食感を目指す。甜麺醤を中心に五香粉で風味をつける。肉味噌ができたら取り出して、改めて豆板醤、刻んだにんにく、しょうが、トウチを弱火で火にかけて、ふつふつと煮えてくる。香りが立ってきたら、肉味噌、よく水気を切った豆腐を入れる。そしてこの後に中華だしスープを入れるか、トマトベースのだしを入れるか、その日の気分で決める。凝って鶏がらスープでやった時期もあった。ある程度水気が出たら水溶き片栗粉でとろみをつけて一気に強火で。お好みであとがけ花椒を。

 いつも同じだ。しかし、なぜこんなに毎回様々な味わいが生まれるのか。  
 「素材の味を引き出すことですよ。」  
 と、昔料理人の北さんとお話をしたことがある。仙台のさる銘店のマスターだ。素材の味、それらの声を聞くということなのだろうか。若い僕にはその達観した精神をただ黙って聞くより他なかった。  
 不思議なことに麻婆豆腐を作るたびに、北さんのお言葉が蘇ってくる。中華料理というのは本当に奥深いと思う。素材に向き合っての調理。なんだか、音楽にも似ているような気がして、麻婆豆腐を作るたびに、自分の襟を正しているような気分になる。

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