年内最後の公演となった佐原詩音作曲個展vol.6を終え、この一年をしみじみと振り返っています。
2022年10月13日、《祭禮 —二台のヴィブラフォンのための協奏曲—》を初演後、強い虚脱感に襲われました。自分自身の中で思い描いていた音楽が空間に解き放たれ「さて、次は?」という漠然たる問いかけが脳内を埋め尽くし、慄然としてしまったのでした。
前半期の1,2月は徹底的に悩みながらも出会ユキさんの企画に携わり小品を上演する機会にも恵まれ、3月には水野修孝先生の作品を集めた個展の開催を通して、10年にわたり水野先生との交流から生まれた作品を俯瞰しました。
4月には北原白秋のまざあ・ぐうすの第一歩となる《世界じゅうの海が》を子どもたちの大きな大きな声とともに初演。5月より着任した千代田区立九段小学校”九段Planets”の朝稽古のサポーター業務は、これまでにない新鮮な音楽の時間の幕開けとなりました。6月には国立劇場さよなら公演の末席を汚し、藤舎推峰 (笛)、小濱明人 (尺八)、池上亜佐佳 (十七絃筝)各氏の、当代一流の邦楽の奏者の方々とのお手合わせは深い学びの経験を得ることができました。7月のかなっくホール企画でも、朝吹英一氏の創作を追いかけることで、ヴィブラフォンの歴史を解き明かす重要な一歩を踏み出すことができました。倉田莉奈さんの素晴らしいピアノとの共演は心躍るものでした。
酷暑の中、8月はほぼ蟄居し、《北原白秋のまざあ・ぐうす》45曲、《リトアニア民謡 “クリスマスの朝、薔薇が咲く”の主題による幻想曲》の作曲に明け暮れました。そして8月は当ブログ開設以来、最も多くの方々に読んでいただいた記事の発端となった公演を鑑賞しに行った月でもありました。今振り返ってみると、あの記事には補足しなければならないことがひとつあります。それは野村誠作品での新倉壮朗さんの、凛とした佇まいです。今もタケオさんの、力強い眼差し、しなやかな身体の優美さが今も記憶に強く刻み込まれています。全ての雑念が取り払われた、その一挙手一投足を生涯忘れることはありません。自分自身と音楽の在り方について深く問いかけられた公演でした。9月には悪友白藤淳一氏の作品を俯瞰する公演、10月初頭には今堀拓也さんの大曲2作品を一挙上演する壮大なプロジェクトを無事敢行することができました。
2023年10月13日、奇しくも祭禮が初演されてからちょうど一年後、《北原白秋のまざあ・ぐうす》《リトアニア民謡 “クリスマスの朝、薔薇が咲く”の主題による幻想曲》が東京とヴィリニュスで初演の運びとなりました。渕田嗣代さんをはじめ、白井麻友さん、小川至さん、端本宇良さん、板谷潔さん、笹原絵美さん、佐原詩音さんのお力の賜物でした。
リトアニアではモデスタス・バルカウスカスと聖クリストファー室内合奏団の一人一人の奏者の方々の熱い響きに心を打たれました。
九段planetsとの初めての大きな本番で彼らの紡ぐ音は、どれも眩しく、自分自身が忘れかけていた響きを呼び起こしてくれるものでした。さらに、郡山での塩釜市立第三中学校の演奏による會田瑞樹作曲《邂逅の鐘》は作曲者冥利につきる演奏に、5人の素晴らしい音楽家に対して、深く感謝の思いが尽きることのない時間を過ごしました。
郡山でのリサイタルでは根本愛美さん、横溝聡子先生との共演、西村薫さんの即興へのアプローチは懐かしき江古田への思慕を作品に昇華しました。11月、テッセラ音楽祭の最終回となるヴィブラフォン独奏による公演は、僕自身が今まで培ったヴィブラフォン作品を中心に、主宰である廻由美子先生に捧げる独奏曲を含め、文化芸術の今後を考える上でも大きな契機となる公演でした。12月にはコントラバス奏者近藤聖也さん肝いりのコントラバスアンサンブル公演、佐原詩音氏企画によるクリスマスを祝う会では、北原白秋の美しい詩に作曲を手掛けた《クリスマスの晩》を山科諒子さん、和田なごみさんの素晴らしい演奏でクリスマスへの深い思いを新たにしました。
年に一度となるリサイタルは2018年以来となる杉並公会堂で、ヴィブラフォンの深い響きに身を委ね、山内雅弘、南聡、福丸光詩各氏の新作を初演することができました。
郡山での年末最後の授業の折、「會田先生は今年一年を漢字1文字で表現するとどんな言葉になりますか」と問われ、少し考え「拓」の字を黒板に書きました。道のないところに、道を切り拓く、開拓者精神を改めて自覚する一年でした。暮れには、九段planetsの面々と何気なく会話をしていましたが、今年の小学校五年生は辰年。僕も来年は年男です。「そうすると、24歳か、36歳…48歳には見えませんね…」と学生さんとの会話。確かに、1988年生まれの僕は36歳の年男になるのだなという責任感を自覚するとともに、様々な世代との邂逅が自分自身の学びを深めることに気がついた一年でもありました。
ついこの間、お招きをいただいたジャン=フィリップ・ラモー作曲《レ・ボレアード》に深い感銘を受け、『自然の諸原理に還元された和声論』(伊藤友計訳)をゆっくりゆっくり読んでいます。音楽は理論だけでなく、思想でもあることを、何かふと気がついたような、そんな気がする年の瀬です。
最後までお読みいただき本当にありがとうございます。どうか皆様も良いお年をお迎えください。
宮城道雄/會田瑞樹
《春の海》(ヴィブラフォン独奏版)
宗次ホール「ランチタイム名曲コンサート vol.2395 ヴィブラフォンのあるところ」において初演。
會田瑞樹
《邂逅の鐘》
塩釜市立第三中学校委嘱作品/アンサンブルコンテスト多賀城地区大会/宮城県大会において初演。
佐原詩音
《closed(not close)circuit》
第一回美術音楽会議(主催:美術紫水)において初演。Cond.佐原詩音/Fl.今井貴子/Vn.鈴木舞/Picutre.四宮スズカ/Vib.會田瑞樹
薮田翔一
《Celeste》
第一回美術音楽会議(主催:美術紫水)において初演。Fl.今井貴子/Vn.鈴木舞/ライヴペインティング.あおいうに/Perc.會田瑞樹
會田瑞樹
《Elegy in memory of Shoichi Aita》
笙奏者出会ユキ氏プロデュース「笙とヴィブラフォンと朗読」において初演。
會田瑞樹
《海のこもれび》
塩釜市立第一/第三中学校「Spring Concert」において初演。
會田瑞樹
《風の揺蕩》
笙奏者出会ユキ氏プロデュース「音楽家のスケッチブック」において初演。
笙:出会ユキ/ヴィブラフォン:會田瑞樹
會田瑞樹/北原白秋のまざあ・ぐうす
《世界じゅうの海が》
子どもの世界・ふしぎな音楽において初演。
ten.高橋淳 pf.小川至
笹原絵美
《空いろの花》
子どもの世界・ふしぎな音楽おいて初演。
Alt.山科諒子 Gl.會田瑞樹 pf.笹原絵美
佐原詩音
《ふしぎな民謡 アイヌと琉球、それから...》
子どもの世界・ふしぎな音楽おいて初演。
Sop.淵田嗣代 Perc.會田瑞樹 pf.板谷潔
會田瑞樹/北原白秋のまざあ・ぐうす
《数学/眼》
子どもの世界・ふしぎな音楽において初演。
Sop.佐藤亜理沙 pf.和田なごみ
ヴィヴァルディ/會田瑞樹
《ヴィヴァルディ「四季」より”春”》
連夜音楽祭「オマージュとヒストリエ」において初演。
Vn.鈴木舞 Perc.會田瑞樹
佐藤伸輝
《ヴィブラフォンとピアノのための即興「天才打楽器奏者/ピアニストになるための手引き」》
連夜音楽祭「オマージュとヒストリエ」において初演。
Pf.佐藤伸輝 Perc.會田瑞樹
佐藤伸輝
《終の住処(2021/2023改訂再演)》
連夜音楽祭「オマージュとヒストリエ」において初演。
Alto Sax.松下洋、Perc.會田瑞樹、Pf.齊藤一也
佐藤伸輝
《如梦令》
連夜音楽祭「オマージュとヒストリエ」において初演。keepsilence主催「自由で真っ直ぐな音楽会」において完全版初演。
Vib.會田瑞樹
佐原詩音
《Black hole Scale》
連夜音楽祭「オマージュとヒストリエ」において初演。
M.Sop. 石田滉 Perc.會田瑞樹
ヴィヴァルディ/會田瑞樹
《ヴィヴァルディ「四季」より”夏”》
keepsilence主催「自由で真っ直ぐな音楽会」において初演。
Vn.鈴木舞 Perc.會田瑞樹
佐原詩音
《AQUA CAUSTICS -水野修孝先生に捧ぐ-》
會田瑞樹の打楽器百花繚乱 〜ピアニスト倉田莉奈さんを迎えて〜において初演。
Pf.倉田莉奈 Vib.會田瑞樹
水野修孝(會田瑞樹編曲)
《ヴィブラフォンと打楽器のための協奏曲》
會田瑞樹の打楽器百花繚乱 〜ピアニスト倉田莉奈さんを迎えて〜において初演。
Pf.倉田莉奈 Vib&Perc.會田瑞樹
白藤淳一
《樫の森の中の修道院》
「WINDS CAFE 321 in 原宿 打楽器百花繚乱X 作編曲家白藤淳一氏を迎えて」において初演。
Vib.會田瑞樹
D.クリボシェ/白藤淳一編曲
《ナオミの夢》
「WINDS CAFE 321 in 原宿 打楽器百花繚乱X 作編曲家白藤淳一氏を迎えて」において初演。
Vib.會田瑞樹
今堀拓也
《Bruckneriana for vibraphone》(全四楽章完全版初演)
今堀拓也作曲個展vol. 1 會田瑞樹ヴィブラフォンリサイタルにおいて初演。
Vib.會田瑞樹
今堀拓也
《「錬金術」ヴィブラフォン、マリンバとエレクトロニクスのための(2011/2023改訂初演)》
今堀拓也作曲個展vol. 1 會田瑞樹ヴィブラフォンリサイタルにおいて初演。
electronics.有馬純寿/Vib,Mar&Perc.會田瑞樹
岡野貞一/今堀拓也編曲
《朧月夜》
今堀拓也作曲個展vol. 1 會田瑞樹ヴィブラフォンリサイタルにおいて初演。
Vib.會田瑞樹
會田瑞樹
《エチュード「飛花」ー塚本邦雄作『空蝉昇天』より“照射”の印象 》
『Vacances Musicales 定期演奏会』-朗読祭り-において初演。
Pf.杉浦菜々子/朗読.會田瑞樹
イングランド民謡/笹原絵美編曲
《グリーンスリーヴス》
ティアラこうとう Monthly Concert vol.244「伝承の調べが紡ぐ世界」において初演。
Vln.白井麻友 Pf.小川至 Vib.會田瑞樹
北原白秋/會田瑞樹
組曲《北原白秋のまざあ・ぐうす》
ティアラこうとう Monthly Concert vol.244「伝承の調べが紡ぐ世界」において初演。
Sop.渕田嗣代 Vln.白井麻友 Pf.小川至 Perc.會田瑞樹
語り.端本宇良 extra.板谷潔,笹原絵美,佐原詩音
會田瑞樹
《リトアニア民謡"クリスマスの朝、薔薇が咲く"の主題による幻想曲》
第三回リトアニア・聖クリストファー国際作曲コンクール本選演奏会において初演。
第三回リトアニア・聖クリストファー国際作曲コンクール特別賞受賞作品
モデスタス・バルカウスカス指揮/リトアニア聖クリストファー室内合奏団
會田瑞樹
《雨上がりのこもれび》
會田瑞樹パーカッションリサイタルin郡山において初演。
Marimba.根本愛美 Vibraphone.會田瑞樹
横田直行
《アンプロムプティユ第3番「花と智慧」》
サウンド・ランドスケープ vol.3~現代音楽の今~において初演。
朗誦:児玉興隆(バリトン) 吉田顕静(バリトン) 和田祐樹(テノール) 薩摩琵琶:川嶋信子 打楽器:會田瑞樹 冨田慎平
會田瑞樹
《リトアニア民謡"クリスマスの朝、薔薇が咲く"の主題による幻想曲》
廻由美子先生献呈作品/第33回テッセラ音楽祭"新しい耳"において初演。
vib.會田瑞樹
北原白秋/會田瑞樹
《クリスマスの晩》
Christmas songの時間において初演。
Alto.山科諒子 Pf.和田なごみ
賛美歌/會田瑞樹編曲
《あめにはさかえ》
Christtmas songの時間において初演。
Alto.山科諒子 Pf.谷合千文
佐原詩音
《クリスマスの音》
Christmas songの時間において初演。
Sop.横瀬まりの Pf.谷合千文 Perc.會田瑞樹
福丸光詩
《メラヘフェット(Gen.1:2)〜ヴィブラフォン独奏のために》
會田瑞樹委嘱作品/會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル2023 闇に舞うにおいて初演。
Vib.會田瑞樹
山内雅弘
《I’m gonna be a Vibraphone〜独奏ヴィブラフォンのための》
會田瑞樹委嘱作品/會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル2023 闇に舞うにおいて初演。
Vib.會田瑞樹
南聡
《碑:stele》una stele in memoria di Yoriaki Matsudaira op.63-3
會田瑞樹委嘱作品/會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル2023 闇に舞うにおいて初演。
Vib.會田瑞樹
會田瑞樹
《環海の歌》
塩釜市立第三中学校委嘱作品/アンサンブルコンテスト多賀城地区大会において初演。金賞/県大会選出。
佐原詩音
《エラトステネスの地球儀》
佐原詩音作品個展vol.6 Studyにおいて初演
Fl.丁 仁愛 Vib.會田 瑞樹 Cb.近藤 聖也 Pf.白河 俊平 箏 十七絃 金子 展寛 箏 三絃 藤重 奈那子 Cond.佐原 詩音