會田瑞樹の音楽歳時記

打楽器奏者、會田瑞樹の綴る「現代の」音楽のあれこれ。

《告知:7月21日金曜17時30分より/霊南坂教会》公募作品演奏会”ラ・フォリア”

 トランペット奏者曽我部清典さんの呼びかけで集まった作曲家と演奏家全員の主宰で、今週金曜日に開催する「公募作品演奏会"ラ・フォリア"」の準備が佳境に入っている。練習室の予約やチラシ、プログラム制作も奏者が手がけ、作曲家はこの演奏会のために新しい音楽を用意してくださった。「創造者たちのプレイグラウンド」と総指揮を務める曽我部さんの言葉が眩しく光る。小生は自作の編曲も含め、8曲参加する。

 《ラ・フォリア》ほど、僕の心をくすぐり、そして掻き乱す言葉はない。

 5歳から手に取ったヴァイオリンは、稽古嫌いが災いして遅れをとるばかり。最悪とも言える生徒の一人だった僕は、しかしヴァイオリンをやめたいとは思わなかった。上級生が演奏していたヴィヴァルディのa-mollのコンチェルトは絶対に弾きたい。そこまでは牛歩の歩みでなんとか辿り着いたが、その後も先生に迷惑をかけながらヴァイオリンにしがみついていた。ついにヴァイオリンを辞めるときが来た時、最後の音楽はコレルリが手がけ、鈴木鎮一編曲による《ラ・フォリア》だった。僕はこの曲の途中で、ヴァイオリンから離れる事になった。最後のレッスンは、曲の真ん中くらいだったと思う。曲が終わる事のないまま、さんざん迷惑をかけつづけた師匠に御礼を述べた。こんなにも出来の悪い弟子が辞めていくのに、先生はなぜ涙ぐんでいたのだろう。僕には今でも分からない。

 大学に入って、《ラ・フォリア》という音楽を途中まで書き残して死んだ男がいると知った時、愛おしく思った。この音楽はそれだけ深い意味があると思った人は、どうも僕以外にもたくさんいるらしいと分かったからだった。

 久木山直さん作曲の《La folia》は、今回ソプラノの新藤昌子さん、ハープの鈴木真希子さんとともに、トリオ・バージョンでの初演となる。
 2015年には楽譜を頂き、ずっと脳裏に初演する事を思い描きながら、僕の技術不足でなかなか手が出なかった、たかの舞俐さん作曲の《Adieu and rebirth》は、ピアノに中川俊郎さんを迎えて、すっかり氏に頼りっぱなしである。題名通りに、深く烈しく、自らの生き様を投影するかのような音楽だ。
 主宰曽我部清典さんとのデュオのよる山内雅弘さん作曲の《Helix Ⅱ》は実験的な試みを踏まえた、掌の小説のような音楽。
 久保田翠さんと音楽での共演は、2011年以来となる。教会の空間を生かした《Nearer,My God》は有名な賛美歌の旋律を虚空の彼方まで響かせる。
 廣田はる香さんとは共通の師匠を通して長く知っていたけれど、音楽でのご一緒は初めて。
 中川俊郎さん作曲の《私たちの『ラ・フォリア』》は、空間の中に「ミサ」を創造する奇抜な試みを。
 僕自身の編曲はヴィヴァルディの《ラ・フォリア》を今回集まった編成のために。ヴィヴァルディもまた《ラ・フォリア》に魅せられていた事がとても嬉しかった。そしてそれは、作品番号第一番。若かりし頃のヴィヴァルディの音楽を現代に蘇らせたいと思う。そして、「ラ・フォリア」と言う出発点をここに表現出来たらと思う。

 7月21日金曜、17時30分より開催のマラソンコンサート。心から御来場をお待ちしております!