食べることが三度の飯より好き:二食め「しいたけ」
しいたけというのは実に独特な食べ物だ。
しいたけの原木を見たことがあるが、実に生々しい。
きのこは宇宙人のようだ。傘が自らを守って、にょきにょきと進む。
そういえば、《きのこ》という童謡があった。まどみちお作詞、くらかけ昭二作曲。ピアノ伴奏の前奏は生々しい不協和を効果的に使い、中間部はロマンティクな部分もあったりと、菌類きのこへの温かな眼差しを感じる音楽だ。
そんな童謡を歌っていた頃、母は炊き込みご飯をお弁当に入れた。
蓋を開けて、匂いを嗅いで、なんか、食べたくないかも。という謎のスイッチが入った。
「せんせー、これ腐ってる。」
我ながら嫌なガキだと思う。もちろん腐ってないし、そのお弁当はその夜、親父が食べ、母親は烈火のごとく激怒した。母は怒り、親父は飯を頬張り、僕は説教を聞く。すごい図だ。
そこに入っていたのがしいたけであった。
しいたけは香りが強い。原木を見ていると強く感じるが生命力の宝庫といってもいいだろう。そんなしいたけは僕の幼少期にはあまり馴染めるものではなかったようだ。しかし、今ではしいたけの芳醇な香りは鍋の中に入れても良いし、様々な料理で香りの一助となる大好きな野菜の一つだ。香りを楽しむまでにはやはり30を超えないと難しいようだ。
しいたけのホタテ焼き。両親がよく作る素敵なメニューのひとつ。
ホタテをマヨネーズであえて、それをしいたけの傘に敷き詰める。ヘタは取っておく。少し粉チーズなんかかけてもいいかもしれない。それをトースタでこんがりと。
海のものと山のものとが出会う、オツなおつまみである。