會田瑞樹の音楽歳時記

打楽器奏者、會田瑞樹の綴る「現代の」音楽のあれこれ。

末吉保雄先生を偲んで

 以下は2016年3月24日に開催された「末吉保雄作品個展 ー内に秘めたる声を求めてー」パンフレットに掲載された末吉保雄先生と會田瑞樹の対談記事です。在りし日の末吉保雄先生を偲んで、ここに再掲させていただきます。

 2018年8月20日に逝去された末吉保雄先生のご冥福をお祈りいたします。
 そして末吉保雄先生の音楽を、これからも演奏してまいります。

                           2018.8.24 會田瑞樹

 

対談             

末吉保雄×會田瑞樹

 

☆ 出会い                   

 末吉保雄先生との出会いは、マリンバソロのための作品《Mirage pour Marimba》(マリンバのためのミラージュ)を聞いたことに始まる。その鮮烈な衝撃をマリンバの師匠である神谷百子先生にお伝えすると「だったらお会いしてみれば良いじゃない」と言われ、神谷先生は末吉先生の連絡先を教えてくださった。お手紙で作品の感想とミラージュを演奏することを添えて投函した。お返事はこないまま、ある演奏会の終演後、お客様のお見送りをしたりしていたら、急に肩を叩かれた。

 

「どうも、末吉です。」

 

 驚いて声も出なかった。あの鮮烈な音楽を書いた末吉保雄先生が目の前にいる。ドキドキしてしまって、僕は御礼と拙い自分の演奏を詫びるばかりだった。末吉先生は直筆のサインが入った楽譜を僕にくれ、夢のような時間を過ごした。今思い返してみても、末吉先生とこうして飲み交わすようになったことが、やはり今でも夢の続きなのではないかと思う事さえある。その後末吉先生との音楽の時間は、僕が2010年に日本現代音楽協会主催のコンクールに入賞してからより一層深まる事となった。2013年ヴィブラフォン独奏のための《西へ》の初演を皮切りに、末吉先生がプロデュースしたコンセールCでの演奏会での共演、日本セヴラック協会主催のオペラ《風車の心》の日本初演など、幅広い音楽の時間を共に歩んでいる。

 

☆ スランプから《翔ぶ》            

 末吉先生の作風は固有の楽器法にあると思う。笛、太鼓、声の3点にこだわって音色を切り詰めていく。そんな作風に辿り着くまでにどんな試行錯誤があったのだろうか。東京芸術大学在学中に行われた「昭和33年芸術祭」のパンフレットを見せて頂いた。末吉先生の発表した作品は《インヴェンション》という作品。12音技法を用いた習作的なものだったと言う。この日の作品発表コンサートは他にも、水野修孝、八村義夫小杉武久、佐藤眞各氏と言った錚々たる顔ぶれが名を連ねている。

 その後も当時最先端の書法を駆使した作品で毎日音楽コンクール第2位、軽井沢国際音楽祭入選、NHK教育番組の音楽作曲やプロデュースと多方面に活躍していた末吉先生。話は大学卒業頃に直面した、スランプの経験に始まる。

 

「言葉に対して自分の音楽を付ける方法を見失ってしまったんです。だから音楽の基礎から全部勉強し直そうと思って伴奏稼業に徹した時期に入りました。いろんな楽器、特に歌ものやドビュッシーなどをさんざん弾いて少しずつ手と耳で覚えていろいろな事を考え直していきました。」

 

 スランプを脱出した作品のひとつである《翔ぶ》という作品は、当時結成した作曲家集団「環」の第一回演奏会でも演奏された。「環」第一回演奏会のパンフレット巻頭にはこのような文章が載せられている。(以下原文ママ

 

「(前略)作曲家は徒党を組むべきではないとお考えの方もございましょう。確かに一理ある事に違いありますまいが、現在私共は「作曲家はだまつて曲を書いていれば自から音になる機会が訪れる」という状況からははるかに遠いとろこにあるのではありますまいか。「一人づつではあまりに微力な私共もともかくこれだけ集まれば皆様方に私共の作曲を聴いていただける場を確保できようではないか」私共の集りはそんなお互いの力をあわせることを第一のよりどころとしております。(後略)」

 

 血気盛んな若いエネルギーがここには充満していたに違いない。そして昨今も結成される作曲家や演奏家のグループを考えてみると、僕たちも同じ線上でこの精神を受け継いでいるように思えた。

 

「みんな音楽学校の先生なんかをしはじめてたから、切符は必死で売れば売れたんだよね。だから東京文化の小ホールは満員でね、補助席出したんだよ。勝手にパイプ椅子持って来てね、並べたから怒られて怒られて…当時は今よりもっと怒られたよ、消防法違反だとか言ってね。始末書とられてさ。二回目か三回目は時間オーバーしちゃって。それで敷居が高くなっちゃって…でも小ホールがいっぱいになったのは覚えている。そういう時代だったんだよ。みんな若いから、売るのもとっても一生懸命売ったわけね。芸大の練習室一つずつ回って「これいりませんか?」て売っていたのもいた。演奏家も錚々たる人物たちだし。」

 

 《翔ぶ》は作詩が服部芳樹、3人の歌手とフルート2人、クラリネット、トランペット、打楽器3人、コントラバスで構成されている。末吉先生が当時書いた曲目解説にはこのような言葉がある。

 

「(前略)—私は、いつかは新しい語りものの様式に至りたいという憧れをもつていて、この曲は、そんな将来への夢への一つの布石になればと願いつつ作曲しました。この曲の首尾はともかく、私は、次に何をなすべきかがかすかにわかつてきたような気がしています。—(後略)」

 

 末吉先生のドラマティックな音楽の流れは、「新しい語りもの」という精神から来ているように思えた。《翔ぶ》の歌詞は砂糖菓子のような甘さを伴う。「行き交う光は地上の流れ星」「ツイストを踊らない?」「シャワーをみてよ つめたいの」などなど。末吉先生は少し照れながらこの詩の言葉を僕に教えてくれた。「この詩の言葉は僕の趣味ではないんだ。」という注を添えて。末吉先生はあくまでそれらを冷静に見渡し、言葉の奥底にある官能に達しようとする。それは音楽でこそなし得る境地だ。

 

 

「長いスランプが吹っ切れた勢いでパリ留学が決まりました。そこで師事したモーリス・オハナが僕のフルートの使い方とか打楽器の使い方にすごく共感してくれて、2人の考えているところはよく似ているっていう風に持ち上げてくれたものだから、僕もすっかり勇気づけられていきました。」

 

 

☆ オペラ《男達》               

 そんな末吉先生に大作の依頼が舞い込む。オペラ《男達》である。好色一代女を現代的な解釈で遠藤啄郎が台本化し、末吉先生が作曲した。会場は国立劇場(小劇場、三宅坂)主役に佐藤美子、装置には妹尾河童などの顔ぶれが並ぶ。当時の公演チラシは中心に「蛾」をあしらった仄暗い美しさをたたえた妖艶なものだ。

 

「当時、オペラというのは過去のものだし欧米の文化の大劇場趣味と思っていました。僕は創作家としても日本人としてもそこにコミットする場所は無いと思っていたんですよ。その中で自分の曲を作るという事はあり得ないと思っていました。だからオペラと言われた時も通常のプロセニアム形式じゃない方が良かった。そのためにも国立劇場は良かったのです。伝統的な劇場でもあり、太鼓や笛を使ったりもするから。」

 

《男達》の楽器編成はフルートが3人、打楽器が5人、コントラバスとチェロに、ピアノとチェレスタを各一人。そして歌い手が入る特殊なものだ。

 

「むしろ、通常の伝統的なオーケストラから遠ざかろうとしているわけですよね。《男達》の中で通常の和声はあまり存在していません。ホモフォニックになる場合はあるけれど、多くは打楽器のリズムと、声と、若干のアクセントとしての笛があるだけで。どっちかっていうと、伝統芸能のなかでも能に近いような感じです。

 

 僕は、自分がシュトラウスマーラーシェーンベルクの先に立つことが出来るとは夢にも思わなかったんです。それは不可能な事だという思いがありました。更にその頃日本人が本当にバッハを分かるかというような疑問をずっと感じていました。それは非西ヨーロッパの文化への興味に繋がって、バルトークを研究することのきっかけにもなりました。だから僕が声や打楽器、笛に近づいていったのは、人類としての根源的な美の体験、伝統的な文化の奥深くに残っているものはそういう音で、それは自分の中でくみ出せる事が出来るだろうと考えていたからでした。ただそこに向かう時には西ヨーロッパの音楽史からは離れるわけです。ピアノ弾くのが大好きな自分や歌の伴奏をたくさんする自分と創作する自分とは当時はつながっていなかったわけです。」

 

☆ 「座付き」作曲家として           

 その後も創作の勢いは止まらない。常に末吉作品の初演パンフレットに名前を連ねる瀬山詠子氏の委嘱により作曲した《おかる勘平》は大きな反響を巻き起こした。《マリンバのためのミラージュ》も安倍圭子氏の委嘱無くして作品の完成はあり得なかったと言う。

 

「《ミラージュ》は自然に、自分の和声的な体験、西洋のクラシックの体験、そういうものと伝統的なものの融合が出来たと感じています。もう僕は既に日本ということにだけこだわっていなくて、打楽器の持っている普遍的なリズム性が分かるようになっていました。ロシア人やスペイン人のリズムの外見や様式は違うけれど、根本で普遍性が保証されている事もよくわかったわけで。だから様式に囚われなくなり、かなりイマジネールなものを重ねる事が出来るようになりました。

 

 今でも、座付き作者としての意識が強いです。常に演奏家のために書いているんですよ。演奏家からの注文が音符を書く動機になるんです。それが僕の作曲家としての基本姿勢です。何のために書くかと聞かれれば、僕は演奏家のために書きます。作品というのは演奏家のための素材です。音楽は演奏によって音楽であって、作品として楽譜に書いているのは素材に過ぎない。あるいは食べられていない料理みたいなもので。作品は演奏によって成就すると思うんですよ。」

 

 

☆ 大切なこと                   

 改めて、末吉先生と音楽を共に出来る事の幸せを実感した。徹底的に切り詰められた独自の表現に達するための鍛錬。自身のアイデンティティを肯定し、内奥から出てくる自分自身の心からの音楽を末吉先生は紡ぎ続けているのだ。最後に先生に伺った。

 

「音楽にとって大切な事とはなんでしょうか?」

 

「人間の音楽。音と人間。僕には、人間のいないところで音を考えられない。音を抽象化して考えるのが作曲家だからいろんなことをやるけれどそれは一つの方法論。でも誰もいないところで音楽はあり得ない。音楽家とは種々の感情の代弁者だと思っているから。

 それと個人的な体験だけれど…よく学校で遅くまで残って仕事をしていた頃、誰もいなくなったあとのステージの上に一人でいるの大好きだったのね。自分が音楽家に還るというか。管理者じゃない、経営者じゃない、音楽家としての空間が自分で感じられてね。ステージを見渡すと楽器が一杯並んでいて、こういうのをみると、もの凄い本能が搔き立てられる。やりたいことは山のようにある。学生たちがよくかけない、打楽器の使い方が分からないと相談してきたけれど、

「回りを見渡して座りなさいよ、楽器と並んで。そうしたらやりたいことが感じられるよ。」と思う。

 たくさんの楽器の回りをうろうろしているだけで、ああ俺、一生、かけるなあ。って。」

 

                            文 責/會 田 瑞 樹

 

《国際交流基金アジアセンター主催事業"Notes" ジョグジャカルタ「Invisible」公演によせて》

曲                           

 「7月にまた会おう!」という言葉をふと思い出す。

 誰だってできない約束をしたいわけじゃない。その人との再会を願う希望と共に、旅立つ人たちを見送る。そうやって人は出会いと別離を繰り返す。

 1月を経ての数ヶ月の間に、僕たちは様々な経験をした。

 日本国内でのミーティングを重ね、僕たちのボス・青柳利枝さんはジョグジャカルタにも赴き、インドネシアの仲間が何を考え、どんなことを志向しているかを丹念に取りまとめてくださった。その時期からぽつりぽつりと曲ができはじめる。最初はギギーだったと思う。ヴィブラフォン独奏のための音楽《夢を見たい》は、日本でギギーが浮かべていた表情そのものだ。続いてアリエフもシンバル独奏のための作品を書きおろす。シアター的な要素も含んでいる。

 なにやら僕もふつふつと湧き上がるものがあった。作曲をすることは昔から憧れの行為だ。10代のときには作曲家の真似事もした。今の自分に何が描けるだろうか。まず全員でできる音楽が欲しいと思った。新加入の落合一磨さんも、できれば青柳さんも参加できる音楽がほしいと思った。そうなると五線紙で表現するよりも、暗示的な言葉で組み立てた方が良いだろうと判断し《The river》を書いた。

 ところで、1月以来からやたらにインドネシアの人たちが僕のInstagramをフォローしてくださっていることに気がついた。彼らのInstagramの華やかさは日本人をはるかに上回っている。センスの良い写真や、時には動画も。そんな中、ある女の子のInstagramに目が止まった。ずいぶん踊りが上手で、ノリノリに腰を振っている。流れてくる音楽はリズミカルで楽しげだ。こういう曲も演奏会にあったほうがいいのではないかと思った。そういえば一月、僕たちは京都で毎夜痛飲し、青柳さんも囲んで踊り狂った。そんな思い出が音楽にならないだろうか。ふと、モーツァルトの時代から頻繁に作られていた「ディヴェルティメント(嬉遊曲)」という言葉が浮かぶ。そして、インドネシアの仲間たちが気に入ったあの日本語がやってきた。そうだ、これでいこう。これが日本からの僕たちのグリーティングメッセージだ。

・・・《カンパイ・ディヴェルティメント》!!

 

 

示部                            

 ガルーダ・インドネシアの鮮やかな青い機体がまぶしく光り輝く。今回コーディネーターを務めてくださる佐久間新さんとたまたま隣同士になり、様々な会話を重ねるうちにあっという間にジャカルタスカルノハッタ国際空港へと降り立つ。最新の設備揃う真新しい空港を闊歩し、空港のほとんど端っこまでたどり着いた時、懐かしい声が聞こえた。アリエフ・ウィナンダとの再会!!変わらない姿に僕はほっとしていた。相変わらず気遣いのアリエフで、まだ買い物に不慣れな僕に付き添ってサポートしてくれる。少し搭乗まで時間があったのでアリエフに「ラーマーヤナ」について尋ねてみた。渡航前までに少しは「ラーマーヤナ」のストーリーを理解したかったのだけれど、なかなか分からなかったのだ。アリエフの説明はとてもわかりやすかった。冒険活劇であると同時に、道徳的規範をも示すこの物語。なんだかラーマがアリエフに見えてくる。

 ジョグジャカルタ・アジスチプト国際空港に降り立ち、僕は何か大きな懐に抱かれたような感覚になった。ジャワの神々がここに降り立つことを許してくださったのなら、僕は心からそれに感謝したいと思わずにはいられなかった。1月からの長い道のりを噛み締めていた。

 翌朝、ホテルに備え付けのプールに飛び込む。長旅の汗がさっぱりと流れて気持ちも晴れやか。今回制作を行う佐久間新さんのスタジオに向かうと、ウェリ・ヘンドラモッコがヘルメットを被って待っていた!!現地でのウェリさんは日本にいた時よりもずっとたくましく見えた。

 さっそく楽器の搬入を行い、少しずつリハーサルが営まれていく。まもなく、ガルディカ・ギギーがやってきた!!颯爽とモーターバイクで登場するギギーは眩しく見えた。

 そうして、1月のあの時のように、誰ともなく、ごく自然に公演リハーサルが始まった。

 

開部                               

 ウェリさんの描いた《龍安寺のハーモニー》は京都の記憶が音楽となって美しく紡がれている。ギギーが翻案して五線紙も使っており、演奏上なんの問題もない。全体合奏の作品以外は、小部屋を使ったりしながら自主的に稽古を重ねていく。

 僕の《The river》もまず音出しに入る。混沌とした世界が広がって僕自身も当惑してしまう。やはりいろいろ細部の決定も必要と思った。なにより、少しシマリがない。これしかない、という決定打を考えなければと思った。

 東京でもそうしているけれど、悩んだ時は、外に出る。今回もまた、ボロブドゥールとプランバナン。二つの遺跡に足を運んだ。そこで見た、特にボロブドゥールの原始的でいて、細部まで行き届いた構築美、そして上層部に上がるにつれて物語が進んでいく表現に感嘆した。これを音楽で活かせないだろうか。細密画のような、「ミクロ・ポリフォニー」で、細かい粒が集積していくような音楽にしたいと願った。

 そしてガムラン音楽に欠かせない、女声の表現を、僕たちは渇望していた。

 ウェリさんにお願いして、奥様である、ワヒューさんに練習に来て頂き、よかったら歌っていただけないでしょうかとお願いすることにした。

 いざ、合奏。The river前半部はミクロ・ポリフォニーを思わせるたくさんの音の集積を目指し、後半はスラマット・アブドゥル・シュクールの言葉を歌と朗唱でコラージュすることを目指した。ワヒューさんの歌声が響き渡る。ジャワの神様が好む声なのかもと夢想した。

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 日本からのご挨拶、《カンパイ・ディヴェルティメント》は琴奏者、金子展寛氏の卓越した技術と音楽性への敬意と、幾度となくカンパイをご一緒してくれたノブさんやインドネシアの仲間への親愛を込めて作曲した。リハーサルを重ねるごとに、なんだかウェリさんが、特に気に入ったらしく、いきなりハグされたのにはびっくりであった。

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 そして渡航前の僕の想像通り、インドネシアの音楽はリズミカルなものが多いことをテレビで知った。夜な夜な、ビンタンビールを片手にテレビをつけると始まったその番組は「ビンタン・パントゥーラ」賑やかに女性も男性も大騒ぎ。歌声が響き渡る。僕はいっぺんにこの番組の虜になってしまった。なんでも五時間にわたる生放送で、一般公募のオーディション番組なのだという。それにしたって、みんな踊りまくっている。カンパイ・ディヴェルティメントで使ったリズムがそこかしこに聴こえてくる。インドネシアってアツい。心が躍った。

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再現部                            

 「この写真を何年後かに見たらきっと思い出せるよ。今はこうして会えるけれど、これからはなかなか会えない僕たちだから、良い思い出の形になる。」

 アリエフの言葉がふと思い出される。人生は旅のように出会いと別れをくり返す。それぞれの思いは音楽に、すなわち”NOTES“となることを信じている。たくさんのお客様に、僕たちの音楽は届いただろうか。インドネシアジョグジャカルタでの公演を経て、僕たちは次の旅、10月の紅葉深まる、少し肌寒さを感じる東京へと向かう。

 

 

東京公演詳細情報は以下に掲載!:

notes.jfac.jp

 

《告知》6月14日(木)早朝5時よりNHK-BSプレミアム「打楽器百花繚乱」

 これで第4回目となる再放送、「打楽器百花繚乱」の放送が近づいてきた。2016年9月、まだ少し暑さの残る時期に101スタジオで二日間にわたって収録した懐かしい思い出が蘇る。ひとりひとりのスタッフの方々にお礼を言いたいくらい、そのプロ意識をまざまざと見せつけられ、僕にとって大きな勉強の場となった。

 打楽器音楽は、またまだ多くの可能性が眠っている。それを照らしてくれた番組のように思えるのだ。しかも、今を生きる作曲家が紡いだ「いま」が刻まれた音楽がそこにはある。もっともっと、多くの人の身近に音楽があってほしいと心から思う。

 そして17日には札幌での公演も控えている。
 

會 田 瑞 樹 札幌で初のミニライヴ!
ヴィブラフォンのあるところ” 〜日本の作曲家たちによる現代の音楽

佐原詩音:Petorunkamuy(新作)
間宮芳生ヴィブラフォンマリンバのための音楽より
湯浅譲二:ヴァイブ・ローカス
水野修孝:ヴィブラフォン独奏のための三章
薮田翔一:Billow Ⅱ
久木山直:La Folia
ほか

2018年6月17日(日)
三響楽器ミューズサロン
〒006-0022 札幌市手稲区手稲本町2条3丁目9番1号
開場13時10分/開演13時30分
前売り券1000円(当日券1500円)限定55席

 実は北海道、幼い頃に行ったきりなので、少し楽しみにしている。お時間ありましたら、皆様どうぞよろしくお願いいたします!! 

国際交流基金アジアセンター主催:NOTESによせて

 遭遇。かつて日本の作曲家、石井眞木(1936-2003)が提唱していたその言葉は僕の中で幾度となく響きました。東洋と西洋の文化が「遭遇する」という思考は、隷属的な意味を持つ「融合」とは一線を画す新たな意味を持つ言葉と僕は確信します。そしてこの言葉は「NOTES」プロジェクトの大きな核となる言葉だと思うのです。

  

 互いの接点は皆無に等しく、生まれも育ちも価値観も、まして国籍や言語も異なる7名の始まりの表情はさながらウブな少女のような面持ちでした。僕は慣れない英語で唇は滑り、本当に彼らとコミュニケーションをとることができるのだろうかという不安はただ増すばかり。このまま黙っていることの方がいいのではないかと思ったとき、僕はいつのまにかマレットを手にしていました。「この日本民謡を聞いてほしい。」それは間宮芳生(b.1929)作曲の「雨乞い歌」でした。そこから、Wellyのガムラン演奏に発展した時、僕は感激したのでした。今まで抱いていた金属打楽器のイメージを大きく覆す繊細な演奏。金属打楽器の持つ余韻を徹底的にコントロールしたWellyの演奏に大きな波動を感じ、すぐさま僕はそこに使っている音列「スレンドロ」を取り出し、そこから即興演奏が開始されていきました。自然に金子さんの箏が加わりなにか聞いたことのないような、たどたどしくも初々しい響きは、かつて原始の音楽はこうして生まれたのではないかという叫びにも似た時間が広がったのでした。

 僕は、特に疑問を持つまでもなくGigihやWelly、Ariefが紡ぐ何気ない旋律の断片を五線紙上に取ることを始めていました。多くはスレンドロ音階を使用するため、へ短調変ロ短調が主ではあるものの、そこには様々なリズムバリエーションが存在し、それらはヴィブラフォンのテクニックにとっても重要な要素でした。またそれらを複合的に演奏することによって偶発的に生み出される「対位法」は実に複雑であり、かつてパリ万国博覧会ガムラン演奏を聞いて多大な衝撃を受けたドビュッシーのその意味の重さを改めて実感することになりました。

 

 いくつかの、偶発的に、誰がはじめるでもなく自然と始まる即興演奏を重ねるうちに、そのほとんどがへ短調もしくは、変ロ短調に落ち着いていることが僕はとても気になり始めました。その時、Ariefが急に思いついたかのようにヴィブラフォンの前に立ちました。

 「君たちの声が半音階的に聞こえるんだ。」

 これは興味深いことでした。ほとんど意識したこともない自分自身の音声は、もしかすると半音的な「うねり」を伴っているのかもしれないという気づき。そして時折3人が会話するインドネシアの言葉のおおらかな響きは、全音的と考えた時、この即興にいろいろな味わいを生み出すことができるのではないかと感じるようになりました。

 

 各人のワークショップが開始されると、なぜかふつふつと疑問が湧きました。スタジオにいることはもちろん大切だけれど、もし自分がインドネシアに行った時に、ずっと窓もなく白い壁に囲まれた閉そく感あるスタジオに監禁されたくないと僕は思いました。なにより、音楽はお客様のためにあるということを僕は信じます。よって僕は、ワークショップとして会場近くの「第五福竜丸記念館」を見学することに決めました。開始前に、以下の拙い英文を述べました。

How do you feel Japan ?

I think all of artist need to have “Imagination.”

And,We must forget to many big problem held in Japan or All over the world.

But,I can’t do it anything else.

But,I can play or make the music.

We have to work on the society.We should get Inteligence.

Today,Let’s Go !!

  およそ拙いこの英語を使いながら、言語とはなんと難しいものなのだろうと思わずにはいれませんでした。Ariefが何気なく、「この箏はどこの産地なんだい?」と聞いた時、金子さんが「福島だよ。」と答えた時、Ariefの叫びにも似た大きな声!いかにこの国が大きな問題を抱えているのか、いつか話し合いたいと思いながらも、まだなかなか話題にすらできない、無力な自分を感じていたのでした。でも、なぜか僕は同時にこう思っていました。

        「なるように、なるさ。(Naruyouni-Narusa ! )」と。

 

 彼らの音楽の断片はかなりの数になり、今後《ヴィブラフォンのためのエチュード》を作曲することを決めました。それは10月には五線紙として表記をし、作曲者自身によって初演しようと思います。
 それというのも、ある時から即興演奏にちょっとしたほころびが見え始めてきたのでした。手段だけでなく方法にも少し無理が生じてきたことは、音楽の難しさを痛感することでした。五線紙の表記というのはあくまでコミュニケーションの道具の一つであり、遠く去っていった人々の残した音楽を再び響かせるための「手段」であると改めて感じたのです。

 

 東京都内の観光は、彼らのキラキラした表情が印象深く残ります。浅草の力強い響きや東京スカイツリーの夜景はどんな風に彼らの目に映っているのだろう。長い旅を経ての移動の最中に、突如勃発した小さな会議は僕の目には奇異に移り、ふとニュースに目をやった時「日本・インドネシア国交60年」という文字が飛び込んできたのでした。

  The close friendship and cooperation between Indonesia and Japan is well reflected in the “benang merah” (red string of fate) or “akai ito” philosophy that symbolizes heart-to-heart relationship based on mutual trust and respect, to work and cooperate together as equal partners.
 The “akai ito” or the red string of fate that connects the two countries, may be stretched or tangled in times, but it will never break. It is my utmost belief that Indonesia and Japan are destined friends who will work and walk together towards our common future.

 インドネシアと日本の友好と協力の緊密さには、「ブナン・メラ」、日本語では「赤い糸」の哲学が反映されています。それは、対等なパートナーとして協力していくため、相互理解と相互信頼の原則に基づいた心と心の関係を表しています。
 両国を結ぶ「ブナン・メラ」もしくは「赤い糸」の絆は、今までに、もつれたり、絡まったこともありました。しかし、互いに尊敬し合い、誠実な心から生まれた両国の友好と協力に鑑み、私は、この友好の絆は決して切れることは ないと信じています。私は、インドネシアと日本は、将来に向けて共に働き、 共に前進する心と心の友人であると信じています。

Jakarta, 20 January 2018

PRESIDENT OF THE REPUBLIC OF INDONESIA,

JOKO WIDODO

 

 JOKO大統領の言葉にある「benang merah」という言葉は僕の中で強い響きを残しました。彼らにこの言葉はどんな意味を持つのか、様々に尋ねました。いわゆる「プロセス」を意味するんだというAriefの言葉や、Gigih、Wellyの優しい表情とともに響く「benang merah」という言葉はなにかともしびのように暖かく響き渡るのでした。そして京都の初日、スタジオに入りGigihが何気無く紡いだピアノのフレーズに、ヴィブラフォンと、金子さんの箏が響き渡ったとき、ニ長調ロ短調の、シャープな響きが初めて浮かび上がってきました。それは確実に、この遭遇が新しいものを生み出すことを確信する響きだったのです。

 

 京都ではスタジオの時間以上に、一人一人のことを知る共同生活の夜の、他愛もない会話が印象に残ります。毎日の料理を木皮さんは懸命に作ってくださり、そのどれもが繊細に行き届いたもので全員が舌鼓を打ちました。あまり飲まないとおっしゃっていた宮内さんは日増しに様々なお酒を飲まれるようになり(それというのも僕や、Welly、Arief、そして金子さんで結成した酒飲みブラザーズのHotHotな喧騒のせいでしたが)そんな中で例えば福島のことも会話したり、自分自身が音楽についてどう思うか、今日のセッションは良かったかどうか、真剣な議論を重ねることもありました。特にGigihは龍安寺に心から感銘を受けたようで、なんどもハグされました。Wellyは本国の大切な友人のために様々な日本のお酒を吟味し、雪に歓喜する姿が忘れられません。Ariefは大切な妹さんのために素敵な帽子を探し回りました。そして、嵐山の竹林の、壮大な交響楽…

 その夜、Gigihと真剣に討論しました。これまでの即興演奏の数々の総評、インドネシアの現代音楽作曲家、Slamet Abdul Sjukurの作品や武満徹伊福部昭などの日本の作曲家の作品の様々な魅力や個性を語り合いました。Gigihに対して、僕の思う遭遇、すなわち「Encounter」の思いを述べ、彼は熱心に聞いてくれた後、さらにそこから、彼は僕らはさらにこの経験を通して「Reflect」することができると熱く応えてくれたのでした。

 本日、成果発表を京都で行い、今後のさらなる方針が企画されていきます。
 多くの方々のご支援、ご指導ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願いいたします。


會 田 瑞 樹
Mizuki Aita 2018.1.26,Kyoto

2017年、33曲の新しい出会い。感謝を込めて。

2017年、33曲の新しい音楽を初演いたしました。
全ての皆様に感謝を込めて。

 

三ツ石潤司

《祈り-2016-》/東京混声合唱団第212番委嘱作品/東京混声合唱団第243回定期演奏会(指揮:鬼原良尚/打楽器:會田瑞樹)において初演

 

薮田翔一

Gush -Concerto for Vibraphone and Orchestra-

アンサンブル・フリー委嘱/第25回アンサンブルフリー演奏会(京都コンサートホール)において初演/指揮:浅野亮介/ヴィブラフォン独奏:會田瑞樹

 

薮田翔一

《祈りの森》より「回想曲」

會田瑞樹委嘱/第25回アンサンブルフリー演奏会(京都コンサートホール)において初演/ヴィブラフォン独奏:會田瑞樹

 

廣田はる香

幻想曲《蝶の声》

公募作品演奏会「ラ・フォリア」において初演/ヴィブラフォン独奏:會田瑞樹

 

たかの舞俐

《Adieu and rebirth》

公募作品演奏会「ラ・フォリア」において初演/ピアノ:中川俊郎 ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

山内雅弘

《Helix Ⅱ》

公募作品演奏会「ラ・フォリア」において初演/トランペット:曽我部清典 ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

アントニオ・ヴィヴァルディ(會田瑞樹編曲)

《La Folia》

公募作品演奏会「ラ・フォリア」において初演/トランペット:曽我部清典 ピアノ:中川俊郎 ソプラノ:新藤昌子 オルガン:塚谷水無子

バリトン:松平敬 ギター:山田岳 トロンボーン:直井紀和 ハープ:鈴木真希子 ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

久保田翠

《Nearer, My God》

公募作品演奏会「ラ・フォリア」において初演/ソプラノ・新藤昌子 ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

久木山直

《La Folia》

公募作品演奏会「ラ・フォリア」において初演/ソプラノ・新藤昌子 ハープ・鈴木真希子 ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

中川俊郎

《La- Nostra -Folia(私たちの『ラ・フォリア』)》

公募作品演奏会「ラ・フォリア」において初演/トランペット:曽我部清典 ピアノ:中川俊郎 ソプラノ:新藤昌子 オルガン:塚谷水無子

バリトン:松平敬 ギター:山田岳 トロンボーン:直井紀和 ハープ:鈴木真希子 ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

露木正登

《ファンタジア(即興曲)》

會田瑞樹委嘱/WINDS CAFE 247【打楽器百花撩乱 Ⅳ ―狂想変容―】において初演/ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

森田泰之進

《Bumpy,Jampy》

會田瑞樹委嘱/WINDS CAFE 247【打楽器百花撩乱 Ⅳ ―狂想変容―】において初演/ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

白藤淳一

《あやかしの余韻》

會田瑞樹委嘱/WINDS CAFE 247【打楽器百花撩乱 Ⅳ ―狂想変容―】において初演/ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

Yohanan Chendler

《twilighting for solo Vibraphone》

WINDS CAFE 247【打楽器百花撩乱 Ⅳ ―狂想変容―】において日本初演ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

J.S.バッハ(白藤淳一編曲)

《イギリス組曲第2番より「サラバンド」(BWV807)》

會田瑞樹委嘱/WINDS CAFE 247【打楽器百花撩乱 Ⅳ ―狂想変容―】において初演/ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

田口和行

《ヨイスラ奇譚》

會田瑞樹委嘱/會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル in Sendai ~出会いの場所で~ において初演/ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

木下正道

《灰、灰たち..灰...Ⅳ》

岩瀬龍太+會田瑞樹委嘱/岩瀬龍太+會田瑞樹 クラリネットマリンバデュオリサイタルにおいて初演

クラリネット:岩瀬龍太 マリンバ:會田瑞樹

 

ロクラン・スキップワース

《hymns in reverie 夢の賛歌》

東京混声合唱団第213番委嘱作品/東京混声合唱団第244回定期演奏会(指揮:山田和樹/打楽器:池上英樹、會田瑞樹)において初演

 

白藤淳一

シアターピース《二重独奏オウム返し》

曽我部清典+會田瑞樹委嘱/會曾Duo vol.2において初演/トランペット:曽我部清典、ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

薮田翔一

《The grand design Ⅳ ~lullaby~ ISO64》

曽我部清典+會田瑞樹委嘱/會曾Duo vol.2において初演/トランペット:曽我部清典、ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

伊藤巧真

《雪吊》

曽我部清典+會田瑞樹委嘱/會曾Duo vol.2において初演/トランペット:曽我部清典、ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

黒田崇宏

《辟遠》

曽我部清典+會田瑞樹委嘱/會曾Duo vol.2において初演/トランペット:曽我部清典、ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

山根明季子

《glittering pattern ♯2》

會田瑞樹委嘱/ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

稲森安太己

《花束》

會田瑞樹委嘱/ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

清水一徹

《Camera obscura》

會田瑞樹委嘱/ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

間宮芳生

《Music for Vibraphone and Marimba》

會田瑞樹委嘱/ヴィブラフォン:會田瑞樹

以上4作品は、2017年會田瑞樹委嘱新作として會田瑞樹ヴィブラフォンソロリサイタル2017

6月7日京都青山音楽記念館バロックザール(約束の場所で)

8月5日エルパーク仙台スタジオホール(出会いの場所で)

10月26日杉並公会堂小ホール(はじまりの場所で)において初演された。

 

金井勇作曲/會田瑞樹作詞

《三つのきょう》

ソプラノとピアノのための作品。作詞提供。

 

国枝春恵

《弦楽器・打楽器・尺八のための音楽 ~花を III ~》

独奏尺八:坂田誠山、独奏打楽器:會田瑞樹、指揮:杉山洋一、管弦楽:東京交響楽団/オーケストラプロジェクト2017において初演

 

薮田翔一作曲/會田瑞樹作詞

《五線紙上の恋人》

會田瑞樹委嘱/「會田瑞樹と五線紙上の恋人たち」において初演/ソプラノ:Sunny、ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

清水一徹

《PARVIS》

作曲年2002年/「會田瑞樹と五線紙上の恋人たち」において初演/トランペット:曽我部清典、スネアドラム:會田瑞樹

 

J.S.Bach/白藤淳一編曲

《フーガイ短調 BWV543から》

會田瑞樹委嘱/「會田瑞樹と五線紙上の恋人たち」において初演/ソプラノ:Sunny、ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

薮田翔一

《師走 ~祈りの森より~》

會田瑞樹委嘱/「會田瑞樹と五線紙上の恋人たち」において初演/ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

薮田翔一作曲/會田瑞樹作詞

《時代は独裁者を求める》

會田瑞樹委嘱/「會田瑞樹と五線紙上の恋人たち」において初演/ソプラノ:Sunny、ヴィブラフォン:會田瑞樹

 

時代は独裁者を求める

www.youtube.com

 

薮田翔一作曲/會田瑞樹作詩                

時代は独裁者を求める》

(2017.12.5初演 打楽器:會田瑞樹 ソプラノ:Sunny)

 

もういいじゃないか これ以上、何を望むのか。

私利私欲の先に、大多数の人々のムクロが見える。

それでも止めようとしない群衆は自らの凶悪性に気がついたのか。

残虐性を認めて、血の味を再び味わいたがっているのか。

 

ならば、僕もまた独裁者になろう。

自らの凶悪性を認めるのなら、それくらいのことはできるはずだ。

独裁とは、一人で出来るものではない。

たくさんの人々の協力を得なければならない。

僕は考えるのをやめてはいけない。

自らをより、強く主張する他に、生き抜く道はない。

 

・・・

 

「ぼくのしょうらいのゆめは、どくさいしゃになることです。」

子どもたちがそう言い出した時、私たちは何を言えるだろう。

何がまちがっているのか、何がいけないのか。

誰も説明することはできないだろう。

かつて異国で、ひとつの民族を根絶やしにした男も、

はじめはひとりの、芸術家志望の青年にすぎなかった。

 

求められ、演じた末のからくり芝居よ。

  

できるだけ良い役を演じたいと思うなら、

独裁者だけはやめなさい。

彼は、誰かに受け入れられたいだけなのよ。

ひとりぼっちがさみしいのなら、そう言えばよかったのに。

いつのまにか、そんな風になってしまったのね。

 

できるだけ良い役を演じたいと思うなら、

僕はあなたと、今日も同じ時間を過ごしていたい。

 

(2017.9.19 / Tokyo)

 

【告知】會田瑞樹サードアルバム『五線紙上の恋人』発表。10.26リサイタルより先行発売。

 「ぼくたちは、各々が想い、感じるままに五線紙上の恋人を探し求めて、彷徨い続けるのだろう。」(會田瑞樹)

 『ヴィブラフォンのあるところ』より半年。會田瑞樹打楽器独奏によるサードアルバム『五線紙上の恋人』をALMコジマ録音より発表致します。「打楽器独奏で紡ぐ音楽劇」をテーマに、「思慕」「別離」「調和」という三つの構成に分かれ、聞くものに様々な感情を投げかける、打楽器音楽の新たな可能性を示唆するディスクがここに誕生。公式発売に先駆け、10月26日、杉並公会堂でのリサイタルにおいて先行発売決定です。(公式発売は12月7日より開始。)

 収録作品は、間宮芳生、末吉保雄、金井勇、バッハ、清水一徹、久木山直、中川俊郎、白藤淳一、福井とも子各氏の作品、さらに作曲家薮田翔一氏の全面協力により、このCDのために作曲された新作《五線紙上の恋人》を収録。薮田氏はジャケット撮影にもその手腕を発揮されました。

 更に、音楽之友社とのタイアップにより、収録作品である間宮芳生作曲《ヴィブラフォンマリンバのための音楽》と末吉保雄作曲《スネアドラムによる”五つの情景”のためのエチュード》の楽譜が同時出版。演奏とともに、楽譜による作品の魅力の表出が期待されます。

eplus.jp

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會田瑞樹サードアルバム「五線紙上の恋人」収録作品

序幕
威勢よく 〜さあいらっしゃい!寄ってらっしゃい!〜
(末吉保雄:作曲/スネアドラムのためのエチュードより)
 
第一幕 思慕
少しおどけて 〜何が踊るって?〜(末吉保雄:作曲/スネアドラムのためのエチュードより)
樹を見る(金井勇:作曲)
五線紙上の恋人(薮田翔一:作曲/會田瑞樹:作詩)
イギリス組曲第2番より”サラバンド” BWV807(J.S.バッハ:作曲/白藤淳一:編曲)
 
第二幕 別離
静かに 〜雨滴れを聞く夜〜 (末吉保雄:作曲/スネアドラムのためのエチュードより)
Camera Obusucura(清水一徹:作曲)
La Folia(久木山直:作曲)
幕間狂言 〜私たちの「ラ・フォリア」より〜(中川俊郎:作曲)
 
第三幕 調和
さあ、行け 〜勇気を奮って〜(末吉保雄:作曲/スネアドラムのためのエチュードより)
あやかしの余韻(白藤淳一:作曲)
U-rahara 〜color song Ⅵ〜(福井とも子:作曲)
Music for Vibraphone and Marimba(間宮芳生:作曲)
 
終幕
帰ろうっと 〜立ち停ったりしないで〜
(末吉保雄:作曲/スネアドラムのためのエチュードより)
 
助成:公益財団法人野村財団(デビューアルバムから三作連続で助成を頂戴致しました。感謝申し上げます。)